No.195 長谷川正の「言ったモン勝ち」
第3回:基本の「自己保持回路」をマスターして、機械の「起動・停止」を追ってみよう!
前回(第2回)では、すべての基本となる「a接点・b接点」の違いと、電気の力でスイッチを切り替える主役部品「リレー」の仕組みについてお話しました。今回はいよいよ実際のシーケンス図を読み解いていきます。
現場の複雑な機械の図面を見て、「こんなのどこから読めばいいんだ...」と圧倒される必要は全くありません。工場の機械を動かす回路の基礎の基礎は、これから紹介する「起動と停止」の回路だけでできているからです。
今回は、スイッチの重要な「特性」の違いに触れながら、シーケンス制御の中で最も頻出する「自己保持(じこほじ)回路」を、電気の流れを追いながらストーリーで読み解いていきましょう!
1.点検の前に知っておきたい!ボタンの2大タイプ
実際の回路図を見る前に、現場の機械についている「押しボタン」には、見た目が同じでも中身の動きが全く違う2つのタイプがあることを覚えておきましょう。
①モーメンタリ型(自動で戻るタイプ)
【特徴】ボタンを押している間だけONになり、手を離すと内蔵されたバネの力で勝手に元の位置に戻る(OFFになる)スイッチです。
【例え】パソコンのキーボードや、玄関にインターホン、クレーンの「巻き上げ」ボタンなど、指を離せばその瞬間に止まります。工場の「起動ボタン」や「停止ボタン」の多くはこのモーメンタリ型が使われています。
②オルタネイト型(交互に切り替わるタイプ)
【特徴】1回押すと、手を離してもボタンが凹んだまま(ONのまま)ロックされるスイッチです。もう1回押すと元の位置(OFF)に戻ります。
【例え】家にある「部屋の照明スイッチ」や、工場の「制御盤のメイン電源スイッチ」など。
「全部オルタネイト型にして、1回押したら動きっぱなしにすれば楽じゃない?」
と思うかもしれません。しかし、もしオルタネイト型を使っていて停電が起きたらどうなるでしょう?スイッチがONのままロックされているので、停電が復旧した瞬間に、誰もボタンを押していないのみ突然機械が動き出してしまい、大怪我となる恐れがあり非常に危険です。そのため、工場の安全を守るためには、手を離したらすぐに戻る「モーメンタリ型」のボタンを使うのが基本ルールになっています。
2.手を離しても動き続ける魔法「自己保持回路」
安全のために「手を離すと戻るモーメンタリ型のボタン」を使うのは分かりました。でも、そうすると別の問題が発生します。ボタンから手を離した瞬間に、機械がすぐに止まってしまうのです。そこで、人間がボタンをずっと指で押し続けなくても、機械が自分で「ONの状態をキープ(保持)」する仕組みが欲しい。これこそが、今回メインでご紹介する自己保持回路です。
図面をストーリーで読み解いてみよう!
まずは基本的な回路を見ていきましょう。下記のシーケンス図は、ボタンスイッチ(BS)を押すと、ライト(L)が点灯する単純な回路となっています。
ただし、ここで使用しているBSはモーメンタリ型ですので、指でBSを押している間だけ点灯し、指を離してしまうと消灯してしまいます。求めているのは「ONの状態をキープ(保持)」する自己保持回路ですので、前回(第2回)で紹介した接点極数が2極のリレーを使って説明いたします。
まずは上記の接点構成を確認しましょう。リレー(R)のコイル端子「14(+)」「13(-)」に電気を流してコイルを励磁状態にすると、a接点である「5」「9」がONになり、ライト(L)が点灯する仕組みです。シーケンス図で表すと以下の通り。
ライト(L)が点灯しない状態からボタンスイッチ(BS)を押すと、
まずはリレー(R)に電気が流れ、コイルが励磁状態となります。同時に、a接点「5」「9」がONに切り替わり、
ライト(R)が点灯します。しかしながら、ボタンスイッチから指を離すとライト(R)は消灯してしまいますので、実際には【図1】と変わりません。
そこで、もう一つの「バイパス用」リレー接点の出番です。具体的には、a接点「8」「12」をボタンスイッチ(BS)と並列になる位置に接続します。
ボタンスイッチ(BS)を押すと、
同じように、まずはリレー(R)に電気が流れます。コイルが励磁状態になることで、a端子「5」「9」と「8」「12」が同時にONに切り替わり、
ライト(L)が点灯しました。ここまでは前回と一緒です。この後、ボタンスイッチ(BS)から指を離してみましょう。
すると、確かにボタンスイッチ(BS)がOFFになってリレー(R)へ流れる電気は無くなりますが、バイパス用として追加したa端子「8」「12」からリレー(R)へ電気が流れ続けるので、ライト(L)は点灯したまま保持されています。これが今回メインで紹介する「自己保持回路」と呼ばれる回路です。
3.じゃあ、どうやって止めるの?「停止ボタン」の位置
一度光り出したらバイパスを通ってずっと点灯するライトを、どうやって消すのでしょうか?答えはシンプル。大元で一気に「電源オフ」する停止ボタンスイッチを配置すればいいのです。
ここで登場するのが、前回学んだ「普段は繋がっているb接点(停止ボタン)」です。もちろん、この停止ボタンも手を離すと元に戻る「モーメンタリ型」です。
自己保持している回路の一番上に、この停止ボタンを直列に配置します。停止ボタンを押すと、普段は閉じているb接点が強制的にOFFになるため、バイパスに流れていた電気もすべてストップします。電気が止まれば下のリレーもOFFになり、完全に回路が停止(初期状態にリセット)します。
4.工場の保守点検の現場でどう役立つの?
皆さんが工場内で「機械のスタートボタンを押したので、なぜか動かない!」というトラブルに直面したとします。この回路を知っていれば、図面を見ながらテスター(電圧計測器)を使って、どこが故障しているのかを、以下のように絞り込めます。
ボタンを押している間だけ一瞬動いて、手を離すと止まってしまう場合
→起動ボタン(モーメンタリ型)自体は生きています。怪しいのは、自動で閉じるはずの「バイパス用のリレー接点」の接触不良や断線です。
ボタンを押しても、最初からピクリとも動かない場合
→大元の電気が来ていないか、あるいは普段は電気が流れているはずの「停止ボタン(b接点)の内部が壊れて電気が途切れている可能性があります。
このように、ただ闇雲に機械をバラすのではなく、シーケンス図の上で「どこまで電気がきているのか」を予想できるようになるのが、プロの機械保全への第一歩です。
今日のまとめ
・スイッチには、手を離すと戻る「モーメンタリ型」と、固定される「オルタネイト型」がある。
・工場の安全のため、起動・停止ボタンにはモーメンタリ型を使うのが基本。
・自己保持回路は、モーメンタリ型のボタンから手を離してもONをキープするための必須回路。
シーケンス図をペラペラとめくって、「なるほど、この停止ボタンを通って、ここで自己保持がかかってモーターが回るんだな!」と読み解けるようになると、機械保全の仕事が格段に楽しく、そしてスピーディーになりますよ。
次回(第4回)は、機械の安全を守る「インターロック回路」と、時間や回数を操って複雑な自動化を可能にする「タイマー・カウンタ回路」について一気に解説します。お楽しみに!
参考)工場の保守点検に活かす!シーケンス制御入門(その2)
参考)工場の保守点検に活かす!シーケンス制御入門(その1)
参考)入れ替えて使える「カセット金型」を徹底解説!
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