【M5Stack】異常検知を自作パトライトで通報とは?
基礎・基本を学ぶ

No.178 長谷川正の「言ったモン勝ち」


金型温度のモニタリングだけでは不十分

前回のブログにて、射出成型機の稼働中は金型の温度をモニタリングすることができましたが、常に人が機械に張り付いている必要があります。更に実践的にするためには、温度異常の際にオペレーターへ自動的に通報する仕組みが必要となります。よくある事例がアンドンを使った通報です。例えば異常停止を表す赤色アンドンの光をトリガーとして何かしらの通報をする方法ですが、当社の射出成型機は20年以上も前のモデルのためアンドンは付属していませんし、オプションでの後付けも手間と費用が掛かりそうです。ここではM5Stackを使った手軽な方法を考えてみます。

自作パトライトの光と音で異常通報

一番最初に思いつくのが、市販している回転警告灯(パトライト)を使って光と音で知らせてくれる方法です。なお、プログラムの中では温度センサーからの値は常に変数へ収納されていますので、これを使わない手はありません。ある一定数値以上となった場合をトリガーとして信号をアウトプットしてあげればパトライトが作動するはず。・・・と思うのは簡単ですが、その信号とパトライトを接続するにはちょっとした電気知識が必要となり、これが電気は難しいと言われる大きな壁となっています。

M5Stackからの信号はスイッチとして利用

M5Stackからの信号(内部電流)を直接接続してパトライトが作動すればシンプルなのですが、実際にM5Stackのピンから出力されている電流はわずかDC3.3Vで乾電池で約2個分。その容量で作動するパトライトは存在せず、完全に容量不足となります。であれば考え方を変えて、M5Stackからの信号をスイッチとして、そのオンとオフによってパトライトの作動を切り替えるようにすれば良いわけです。これには、トランジスタとリレーを組み合わせた接点出力回路を利用する方法があります。

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長谷川正

トランジスタとは、電気の流れをコントロールする部品で、小さな信号を大きく増幅したり、信号によって電気を流したり止めたりする働きがあります。

NPNトランジスタの働き

今回使用するトランジスタはNPN型と呼ばれるもので、B(ベース)からE(エレッタ)に0.7V以上の電圧をかけて微小電流を流すと、トランジスタがON状態となり、C(コレクタ)からE(エレッタ)へ大電流が流れるようになります。逆にB(ベース)からの電圧が低ければC(コレクタ)とE(エレッタ)の間はOFF状態となり電流は流れません。このようにB(ベース)をスイッチとしてC(コレクタ)からE(エミッタ)への電流の流れをON、OFFすることでスイッチング動作が可能となります。※ROHMのHP参照

アイアール技術者教育研究所HPより

リレーの働き

リレーは、トランジスタと同じくスイッチング動作を行いますが、主に下記のメリット・デメリットがあります。

1.入力(コイル)と出力(接点)が絶縁されているため、直流(DC)で交流(AC)のスイッチングが可能
2.電流・電圧の定格が大きいため、大電流を流すことが可能
3.複数の負荷回路のスイッチングが可能
4.動作する温度範囲は広いが、接点摩耗による寿命あり

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長谷川正

コイル部に電流を流すとON状態となるものをa接点(arbeit contact)、逆にOFF状態になるものをb接点(break contact)、a接点とb接点の両方を含んだものをc接点(changeover contact)といいます。

今回は交流(AC100V)で動作するパトライトをスイッチングしたいのでリレーは必須ですが、M5Stackからの信号(DC3.3V)では内部電流が小さすぎるためリレーが作動しません。そのため、電流量を増幅させるためにトランジスタも併用しました。M5Stack BASICを使った接続図は以下の通りです。M5StackからDC5Vも取り出せるのが便利ですね。

これで、金型温度のモニタリングだけでなく、異常温度での警告を自動的に通報することができます。ですが、このままでは異常時にパトライトが作動したままになってしまうため、対応したオペレーターがパトライトを一時的にオフできる機能などを付加する必要がありそうです。次回のブログでは、この接続図をスケッチ(プログラム)に落としてみます。

参考)【M5Stack】ATOM Matrixでの原因不明トラブルとは?
参考)【M5Stack】NTPサーバーから時間情報を取得する方法とは?
参考)【M5Stack】Ambientにてデータを見える化する方法とは?
参考)長谷川製作所の得意技術(防水照明器具製造)


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