振込手数料は支払側負担という法的根拠とは?
基礎・基本を学ぶ

No.174 長谷川正の「言ったモン勝ち」


振込手数料は債務(支払)側負担とする方針

令和5年10月より、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始されます。それを機に、当社としましては、販売や仕入に関わらず支払い時の振込手数料負担は債務(支払)側とする方針を打ち出しました。なお、現時点ではインボイス制度導入での事務負担が増大する問題は既に解決されていますが、この方針には大きく関係してくる事柄ですので、その根拠を以下に説明いたします。

インボイス制度導入にて影響を受けるのは?

上記のインボイス制度が導入されることになる際に大きく影響が及ぶのは、新聞やマスコミでは個人事業主と主張されています。なお、インボイス制度を一言で表すと、「消費税の計算をより厳密にしますよ」ということで良いでしょう。一般的に消費税とは一時的にユーザーから預かった税金ですので、受け取った(預かった)消費税額から支払った(預けた)消費税額を引いた差額を納税する義務があります。ですが、納税義務が免除されている売上高1,000万円以下の個人事業主にとっては、ユーザーから預かった消費税を個人事業主の益金(もうけ)として計上している益税問題があります。私見としては、いつかは益金問題にメスが入って正常化するだろうなと思っていましたし、厳しい言い方になりますが、あるべき姿に是正されただけとも考えられます。それよりも、インボイス制度導入にて本当に困っているのは、個人事業主というよりも、むしろ中小企業の方なのです。

迷走するインボイス制度

多くの中小企業で問題となっているのは、代金の支払側が振込手数料を事前に差し引いて支払ってくる場合です。なお、インボイス制度の開始前では、受取側にて2通りの会計処理が選択されてきました。一つは①売上の値引きとして処理する場合、もう一つは②振込手数料を費用(支払手数料)として処理する場合です。しかしながら、インボイス制度下では全ての取引にてインボイスが必要となるため、①と②いずれの場合でも消費税額を明確に記した適格返還請求書(返還インボイス)を交付することが義務となり、振込および受取側双方の事務負担が増加してしまうことが懸念されていました。しかしながら、多くの中小企業から見直しを求める意見がパブリックコメントとして提出されました。そのため、「令和5年度税制改正大綱」にて①の交付義務が免除、また、大綱が公表された翌月に公開された「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答(令和5年3月31日時点)」にて②の交付義務も免除され、実質的に従来の事務負担量に戻っています。ですが、制度自体が迷走していることは否めない事実となっています。

大きな喜びと小さな違和感

私としては、これで良かった良かったと両手を挙げて喜び、少なくとも政府の改正案に安堵すると共に、パブリックコメントの影響力の大きさを実感しました。しかし、同時に多くの企業が見直し案を求めたことに対して小さな違和感も覚えました。つまり、受取側が振込手数料を負担するのが商習慣なんですか? それだけ多くの場合で受取側が負担しているんですね? 興味深く調べてみると、振込手数料は受取側でなく、原則として支払側が負担する義務があり、民法第484条および485条に「持参債務の原則」という法的な根拠で明文化されています。例外として、受取側が負担するという双方合意があれば適用されませんが、合意がない場合、振込手数料は振込側が負担するのが原則となります。しかしながら、民法による原則があるのにも関わらず受取側が負担することが日本の商習慣になっていることは、注文を出した方が優位、中小企業は大企業と対等ではない、ってこと? それが通例?

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長谷川正

「持参債務の原則」とは、受け取る人の場所へ、渡す人が目的のものや金銭を持っていくこと。また、それにかかる費用は渡す人が負担するのが原則、とされています。(民法第484条および485条)

これらより、長谷川製作所としては、注文を受けて頂いた会社と弊社は全くの対等な立場であり、また、販売先である企業とも対等な立場であることを主張したいと考えております。インボイス制度の導入をきっかけとしたこのような考えが、冒頭の方針を発表した経緯となります。しかしながら、こればかりは当社の要望に過ぎす、取引先との双方の同意が大前提となっています。当然ながら、取引先との良い関係を維持することが最優先と認識しており、決して当社が強硬な姿勢になることはありません。長い時間をかけてでも少しずつ理解を深めあっていくことが双方にとって大事であると考えています。

なお、自明ですが、当社から支払の際は振込手数料を当社にて負担することも併せて宣言いたします。

取引先の反応

前述したとおり、令和5年5月に「振込手数料ご負担のお願い」という文書を取引先に対して送付し、当社の考えを理解してもらうとともに振込手数料を負担していただけるよう、お願いしました。気になるのはその結果ですが、令和5年9月現在、ほとんどの取引先にご理解を頂き、振込手数料を負担していただけるようになりました。本当にありがたいことで心より感謝いたします。とは言っても、何にも反応がない取引先は10月以降も引き続き振込手数料を差し引いて支払ってくるのかもしれませんので、継続してお願いしていく方針です。

取引基本契約書を見直す

ここで、一番面倒なのは既に取引基本契約書を締結していて、その条項に「振込手数料は受取側負担」と明記している場合です。この場合、上記民法に反しているわけではないので仕方ありませんが、契約書の条項の中に「疑義については甲乙協議する」ことが多くの場合に載っていますし、契約の有効期間が1年間となっている場合が多いので、次の更新の際に契約内容の見直しをお願いすることができます。当社の場合、令和5年8月に通販業界大手のT社と取引基本契約書の見直しを協議したことがあります。本社に出向き当社の方針を説明し、その後メール(文書として残しておくことが肝)でのやり取りを行っています。残念ながら当社の希望通りの見直しは認められませんでしたが、その協議した経験および経緯が今後の財産になると考えており、決して無駄な活動ではなかったと自負しています。また、その会社による取引先への考え方などが垣間見えるのも興味深いですね。

2026年、紙の手形廃止とでんさいへの移行

政府と産業界、金融界は、2026年に紙の約束手形の利用廃止に向けた取り組みを行っています。順調に進めば、おそらく現金決済にて銀行振込の機会が増えると思われます。振込手数料の負担はボディブローのように効いてきますので、できるだけ早く、何らかの対策を講じることが必要です。また、紙の手形が廃止されると電子記録債権(以下、でんさい)が増えてきます。しかし、でんさいも便利ですが、手数料が無料になるわけではありません。インボイス制度では、でんさいを発行する際の「でんさい発行手数料」も振込手数料と同等の扱いとなりますので、「持参債務の原則」に従って、いかなる取引相手にも適正な負担を交渉できれば幸いです。

なお、上述した紙の手形廃止は約束手形に限定され、(令和5年5月現在)為替手形は廃止の対象から外されています。約束手形と比べると流通数は少なく目立ちませんが、為替手形は支払側の印紙貼り付けも回避できるため、全ての手数料を受取側に負担させる究極の支払方法です。中小企業のことを考えてくれるなら、為替手形も含めて廃止してもらいたいですね。

小規模事業者にやさしい2割特例とは

表題とは関係が薄いのですが、とてもお得な税制度がありますので紹介いたします。インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者に変更した小規模事業者の方については、2023年度税制改正にて新たに設けられた「2割特例」という負担軽減措置があります。要約すると、消費税の納税額が預かり消費税の2割に減額され、卸売業と小売業以外の簡易課税を選択しているすべての事業者に当てはまります。もちろん一般課税を選択の小規模事業者も適応可能です。しかも、適用にあたっては事前届出が不要で申告時に選択するだけ。ただし、適用期間は令和8年12月末までとなっています。

振込手数料を負担してもらう時の文面

様々なひな型文書がネットで公開されていますので、そちらをコピペしてもらえれば問題ないと思われます。ちなみに、私がおススメする文面は以下の通りです。(時候の挨拶は省略しました)

「さて、2023年10月1日から、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が開始されました。
インボイス制度では、振込手数料等を弊社で負担する場合、原則として貴社から立替請求書を交付いただくか、弊社から返還インボイスを交付する対応が必要となります。
つきましては今後の事務効率を考慮いたしまして、2023年10月1日以降のお支払いより、貴社にて振込手数料・でんさい発行手数料・手形郵送代をご負担いただけますようお願い申し上げます。
大変申し訳ございませんが、何卒ご主旨をご理解賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。」

参考)【M5Stack】センサで金型の温度測定とは?
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参考)長谷川製作所の得意技術(防水照明器具製造)


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